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【明日への扉】夜を徹して演じる奉納神楽の舞台裏〜若者たちがつなぐ伝統の舞〜

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(以下は2016年4月に放送されたものです)


神が舞い、鬼が暴れ、大蛇が火を吹く。


島根県西部の石見(いわみ)地方は、秋祭りの季節を迎えると神楽一色に染まる。


この土地の人々が愛してやまない伝統芸能、石見神楽。豪華絢爛な衣装に身を包んだ舞子たちが、テンポの早いお囃子に合わせて神話の世界を表現する。そのスケールの大きさとダイナミックな舞に、老いも若きも同様に酔いしれる。


石見神楽の起源は室町時代後期で、もともとは神職が五穀豊穣を祈願し、神々に捧げる儀式だったという。明治時代に神職の舞が禁じられてからは一転して土地の人々に受け継がれ、やがて民俗芸能として深く根を下ろしていった。


今では石見地方だけでも130の神楽団が活動し、伝統を受け継いでいる。中でも比較的新しいのが、今回ご紹介する『大津神楽団』だ。





16年前、大津神楽団は二人の情熱的な若者とその仲間たちによって立ち上げられた。


当時まだ高校生だった大畑公人(おおはた・きみひと)さんと、中学生だった惠木勇也(えぎ・ゆうや)さんには大きな共通点があった。二人とも幼い頃から石見神楽を愛し、自分たちで衣装や面を作っては神楽ごっこを楽しむ「神楽人」だったのだ。



大津神楽団を結成してからも作れるものは自分たちで作り、道具を揃えるためにアルバイトに励む日々が続いた。その経験が二人をやがて職人の道へと導き、今では惠木さんは石見神楽の面師、そして大畑さんは衣装刺繍職人として多くの神楽団から依頼を受けながら、作品に真摯に向かい合っている。



驚くことに、二人には師匠がいない。惠木さんも、大畑さんも、それぞれ独学で技術を身につけ、かつ独創的な作風を編み出している。さらに驚くことには、日々職人として研鑽を積む上に、さらに舞子としても現役で活躍し続けている。


結成から16年を経た大津神楽団は、今では団員20名を有する。大畑さんと惠木さんは副団長として団員をまとめつつ(※放送当時)、自らも舞台で舞う。


石見地方では毎年秋に奉納神楽が催される。夜更けから翌朝まで全部で10演目が途切れなく披露され、その舞台裏は過酷を極める。30kgにもなる重い衣装を身にまとい、面をつけて、一演目一時間にもなる激しい舞を舞い続けると「地獄を見る」という。体力の限界を越えて、舞終わると立つことさえできない疲労感に襲われる若者もいる。



それに加え、団員たちは音響・照明・着付け・舞台の飾りつけまで、お互い協力し合いながら自分たちの手でこなしていかなければいけない。


なぜ彼らはそこまでして石見神楽を舞い続けるのだろうか?


「この石見に生まれて、石見でしかできない仕事をしてここに存在しているっていうのを確認できる、そういう大切な存在が石見神楽なんだと思います」と惠木さんは言う。


また、大畑さんは「神楽に携わることによって地元を愛する心やその歴史に触れて、すごくいい経験になっていると思います」と晴々とした笑顔で語る。


神に捧げる伝統の舞は、こうした若者たちによって受け継がれてきた。職人として、舞子として伝統を受け継ぐ誇らしい姿を、ぜひご覧いただきたい。



続きは、ディスカバリーチャンネル放送から。


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Text by Discovery編集部

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