【明日への扉】「幻の古陶」を明日につなぐ~500年の沈黙を経て復興を遂げた珠洲焼~
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ただそこにあるだけで目を奪われる美しさ。
珠洲焼(すずやき)は能登半島先端の珠洲市(旧珠洲郡)を中心に中世日本で栄え、忽然と消えた「幻の古陶」だ。
きゅっと焼き締められた黒灰色の肌に自然釉が流れ、幽玄の景色をあらわす。ほかの中世陶器には例を見ない変化に富んだ装飾がほどこされており、見る者をはっとさせる存在感がある。
珠洲焼はかつて船運により北陸・東北・北海道に至る日本海沿岸を広大な商圏とし、まさに中世日本を代表する陶器であった。しかし15世紀末、戦国時代の訪れとともに姿を消してしまう。衰退の理由はいまだ解明されていない。
珠洲焼の存在が再認識されたのは昭和になってからだ。珠洲焼の復興に尽力した陶工たちが、41年前に「強還元炎燻べ焼(きょうかんげんえんくすべやき)」という珠洲焼独自の焼成を再現することに成功し、見事現代によみがえらせた。
中世の製法に現代の多彩な技が加わり、シックな暮らしの器としても近年人気を集めている。
金沢出身の中島大河さん(25)も、珠洲焼の奥深い黒灰色と朴とつとした姿に魅了された若者のひとりだ。
中島さんは2017年に奥能登国際芸術祭に金沢美術工芸大学のプロジェクトチームリーダーとして参加した折に珠洲焼と出会った。その後珠洲焼を本格的に学ぶために金沢から珠洲市へ移住し、現在は珠洲焼作家・篠原敬さんのもとで作陶に励んでいる。
昼間は道の駅でアルバイトをしながら生計を立て、仕事が終わるなり師匠の工房へ通う日々も一年半ほど過ぎたところで、中島さんの陶芸人生において大きなターニングポイントが訪れた。
自身初、すべて自分の作品での窯焚きが許されたのだ。
陶工の道を歩み始めてからたった一年半で窯を焚くのは異例だという。師匠の篠原さんからは、「自分の目で精査すること」と背中を押された。中島さん自身は、「今回の窯焚きは自分の今の状況が全部分かるものになると思うと気が気ではない」という。
珠洲焼の窯焚きは昼夜を通して5日間ほど行われる。アカマツの薪や端材を手に入れ準備した薪を600束用意し、炎の流れや灰の動きを想像しながら作品を適所に窯詰めすると、いよいよ火入れだ。
『強還元炎燻べ焼』は薪を焼べるタイミングや空気の流れを見極めるのが難しい。誤った判断は窯の圧力と温度に悪影響を及ぼし、最悪の場合作品を台無しにしてしまう。当然だが自らの責任のもとで焚く。
中島さんの珠洲焼作家として培った経験すべてをかけた初窯焚きへの挑戦が始まった。彼をあたたかく見守り、的確なアドバイスをくれる師匠がいる。助けてくれる友人たちもいる。
体力と気力の限界に挑みながらひたむきに窯と向き合う中島さんの姿を見ているあなたも、思わず「どうかうまくいきますように…!」と応援せずにはいられなくなるだろう。
賽は投げられた。果たして、初窯焚きの成果はいかに…?
続きは、ディスカバリーチャンネル放送から。
~at home presents明日への扉~
ディスカバリーチャンネルにて毎週金曜、夜10時53分から放送中。
明日への扉公式ページはこちらから。
https://www.athome-tobira.jp/
Text by Discovery編集部
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